2015年6月15日月曜日

かつて登った山を眺めるのも楽しい 立山短スキー体験記                    鎌田 克則

 昔、常念から蝶を縦走したとき、ここはもう穂高に登れなくなった老登山家が、かつて登った岩稜や厳しいルートを眺めるために来るところなのだ、と聞いたことがある。

確かに80歳目前の私にとって、あの峰、あの斜面を思い出して、それこそ「片雲の風に誘われて、漂白の思いやまず」となるものの、その途端もう若くないのだと反省することしばしば・・・



たまたま大きな車の取り回しが辛くなって、車検を期にディーゼルのコンパクトカー4wdを注文した所、2ケ月近くかかり、且つ届いた時は、病や野暮用が連続、うずうずと言うか「そぞろ神の物に尽きて心狂わせ」となり、「取もの手に付かず」(以上奥の細道前文抜粋)64日(木)週末好天を期待し、短スキー一式を積んで、友人と白河の関ならぬ北陸道を目指す。

先ずは天候回復まで能登半島で2日間つぶし、6()午後天候回復の報にその昼頃、立山駅に到着、美女平経由、室堂に向かう。

お気づきでしょうが、先の北山の会のブログに、高鍬さんの立山報告、特に彼の赤いヘルメットと赤いウェア―で万歳している姿の写真が、頭にインプットされていたことは間違いありません。「ええい、わしも行く」とまあ次元の低い発想。

さすが立山駅~美女平~室堂までの1時間強は、土日で人は多いものの、段取りよく進む。早速雪原で一寸短スキー装着したが、試すほどにもならず。
先ずはミクリガ温泉へ。室堂より15~20分の距離。私はここがご贔屓。温泉は良いし、親切だし、食事もなかなか、それに何とトイレはウォシュレットになっていた。

部屋は2段ベッドだが、高さも幅も有り、それぞれ仕切りカーテンも有って、空いており、昔の山小屋とは雲泥の差、快適である。

段々天候が良くなる。サンダルを履いて、直ぐ上の展望台に登る。

西日が傾きだすと立山連峰が眼前に堂々と現れる。浄土山、一ノ越あたりに一寸雲、何と言っても立山三山、そして別山乗越、剣御前の小屋が見える。

 

 

 

 

 

 

そこに至る雷鳥沢、室堂乗越。その左は奥大日、大日が,逆光ながら手前の地獄谷からの噴煙に見え隠れする。全く雄大で残雪の立山連峰の景色に見惚れるばかり。これは絶対お勧め。但し好天が必須条件。

何と言っても雷鳥沢を登り,別山乗越を越え、剣沢を滑り、又もや雷鳥沢を滑って戻った思い出が胸にせまる。よくあの急な斜面を登り下りしたものだ。

 
 
 
 
 
 
夏や秋、剣や剣沢から仙人池、欅平に下った事や、薬師、太郎兵衛平に縦走した事。若かりし頃、大日平方面でキャンプしたこと等思い出は尽きない。

 

 

 









ふと近くの人が静かにカメラを構えおり、その方向を見ると、茶色と白の羽が混ざった雷鳥が数メートル先にいるではないか。パチリパチリ。

体が冷えて来るので小屋に戻り、温泉に浸かる。ああこれで良い。登るだけが能ではない。この歳でこの風景を眺められるだけで幸せと思うべし。

美味しい食事を頂き、又風呂に入って早々に寝る。




6()快晴、朝日の写真を撮る話もあったが、起きた時は明るく、また朝風呂に浸かり、遅い朝食を頂き、ゆっくり出発。実は雪の緩むのを待って短スキーを試す算段。

短スキーには、シールもアイゼンも有るのだが、雪も手ごろな硬さで、短スキーをリュックに括り付け、壺足で室堂に向かう。

 

 

 
 

今度は奥大日、大日が朝日を浴びている。

一ノ越方面には何か一直線のラインが「く」の字型に引かれていて、多分雪上車の道になっている様だ。そんなルートは御免と、浄土山と室堂山の間の鞍部を目指し、一直線に登り出す。同行の友人には、鞍部に着いたら電話するから、その時華麗な姿を撮影するよう頼んである。

まだ病み上がりで、もう一つ元気が出ないが、せめて鞍部辺りから滑らなければ、短スキー持参、兼用靴を履いて来た甲斐がない。

ハアハアと登っていると、鞍部手前で電話が鳴る。取ってみると何と中村淳先輩。「これから自宅に私のスキーを届けに行くが、都合はどうか」との問い合わせ。「今立山浄土山の斜面を登っている所です」と伝え、そして携帯の赤ボタンを押した。(この時一寸押し過ぎたらしい) そしてやっと鞍部らしい所に登ったら、まだその上がある。でも雪面の具合も良くないので、ここで短スキーを履く。

いよいよ滑り出す際、室堂からの撮影を頼むべく携帯を取り出すと画面は真っ暗、もちろん通じない。壊れたと思って、取り敢えず滑り出す。所が斜面には50cmぐらいの幅で、雨水が流れる深い溝が一斉に並行して並んでおり、短スキーは滑るどころか、全くその凹凸を越えるのに必死、要はガタガタ。回転するのは簡単だか、そのボコボコが邪魔をし、それどころではない。下から見ている人も居るから、コケられないし、唯々必死で下るのみ。凡そ快適とは縁遠し。やっと下方に着いた頃、友人も気が付いて写真を撮ってくれたそうだが、見る気もせず。

せめて長いスキーを持ってくれば良かったと思いきや、高鍬さんの報告を再度見ると、やはり長いスキーでも弱ったと書いてある。もっとよく読んで来れば良かった。

後は一寸バスから雪の大谷の雪壁を眺めただけで、何の未練もなく立山駅へ。そして小型ディーゼル車で一路大阪へ。なかなか静かで加速が良い。それに軽油でリッター辺り18km走るので機嫌を直す。

ところでその翌日、潰れた携帯を持ってNTTドコモに怒鳴り込んだ。待たされた挙句、「お客さん、これは電源を切って居られるだけですよ」との事。

嗚呼、歳は取りたくない。

 

 

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