2011年5月24日火曜日

                         クリンソウに異変

 5月15日に北山荘へクリンソウを見に行った。4月24日の北山荘の集いに行ったときは、まだ咲いていなかった。ことしは寒さで、山野草の開花が1週間から10日くらい遅れているようだ。北山荘で竹内康之君に会った。「五葉ケ谷のクリンソウが変でっせ、花が落ちている」と教えてくれた。
 小舎の橋に防腐剤を塗ってから五葉ヶ谷へ向かった。ここには昔からの群落地がある。「三高山岳部報告」か一中山岳部報告「嶺」の古い号で、群落地のことが書いてあったのを読んだことがある。大正末期か昭和の初めごろの話である。
足を踏み入れて驚いた。花がない。よく見ると、ちぎれて落ちている。葉も心なしか元気がない。どうしたことか。少し上の群落は株が少なく、地肌が見えている。かつては一面の花畑だった。何が起きたのか。
 日曜とあって、魚谷登山の人たちが三々五々通り過ぎる。「クリンソウが変ですね」と言っている。「鹿のせいです」と、したり顔に言う人も。この人によると、鹿は花や葉は食べず、茎だけ食べるそうである。だから、花が落ちている。
 ほんまやろか。鹿説には疑問なしとしない。鹿はクリンソウを食べないと聞いている。だから、北山にクリンソウが残っているのだ。ササユリなど、とっくに絶滅した。それに、鹿だとしたら、すべてのクリンソウの茎がやられるはずである。花が落ちているのは五葉ヶ谷だけなのはなぜか。北山荘周辺も、クラガリあたりもクリンソウは健在である。鹿がエリアによって食の選り好みするだろうか。
 インターネットで調べてみると、奥日光ではクリンソウの群落に、鹿の食害防止のネットが張ってあると書いてある。ただし、このクリンソウは野生種ではなく、持ち込まれた外来種が広がったものだという。写真を見ると、白やピンクが混じっており、明らかに、北山にあるものとは別種である。別のコーナーには、鹿はクリンソウを食べない、とある。野生種は食べず、外来種は食べるのだろうか。
 私は鹿の食害説を信じていない。去年まで見事な群落だったのに、急に鹿の嗜好が変わって茎を食べ始めるはずがない。他に原因があるはずである。傾斜地の株が少ないのは、大雨で表層が流されたかもしれない。花が落ちているのは、信じたくないが、誰か悪いヤツが、棒でたたき落としたのではないだろうか。クリンソウは実生で芽を吹くのか、それとも地下で越冬した根茎から生えてくるのか。実生なら、もう、咲かないかもしれない。ことしは一時的な異変であってほしい。来年、また群落地の花が復活することを強く願う。

 山シャクヤクはやや盛りを過ぎたがあちこちで咲いていた。北山荘のそばでは、一輪だけ咲いていた。山桜は散った後だった。洛北の山岳部の顧問をしていたという人に会った。名前は失念した。5年前に定年退職したそうだ。      (2011年5月18日、四手井 靖彦)

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