壺足の悲哀
鎌田 克則(L) 中村 淳
3月7日、「明日は晴れなので決行しましょう」と鎌田リーダーから電話があり、その日の16:00に地下鉄竹田駅で合流し、鎌田リーダーの車で大雨が降り続く中一路ひるがの高原の宿「アイリス」へ向かう。到着20:25、入浴して一杯やり、就寝する。
3月8日、予報通りに青空が拡がる。7:30に朝食、高鷲スノーパークの大駐車場に入る。既に7割近い車が駐車している。スキー装備を整え、受付で登山カードを提出、SPゴンドラに乗り標高1550mへ登る。ここでシールを装着し、9:40登攀開始。シールの効きがいい。
上空は晴天だが進路はガス、一歩一歩標高を稼ぐ。大日ヶ岳 頂上に立つ |
11:05 大日ヶ岳(1708.9m)登頂。ガスが消え、白山、別山から南へ石徹白の野伏岳、小白山を一望。
南には桧峠へ連なる尾根には巨大な雪庇が見える。かつて中3の春山で、富田先生、アンチンとこの尾根を登り雪庇の上に立ったが、気象条件が悪く断念して下山した。高2の時、一年下の河端繁、山下隆司と三人でこの尾根から登頂した。
桧峠へ連なる南陵 |
山頂でシールを外し、山並みを眺めながら行動食を摂る。頂上の四五十名の男女ボーダーが一斉に東北尾根を降っていった。鮮やかな滑りだ。
下山は、鎌田リーダーが10回以上滑っている東北尾根を降り、1396m地点から叺谷へ降り、ここでシールを付けて標高50m登ってゲレンデに出るルートだ。
東北尾根を滑降する |
11:30 滑降開始、鎌田リーダーの後に中村が続く。尾根の幅が徐々に狭くなる。雪質は昨日の雨を一杯含み、重たく抵抗がある。途中、休憩をしながら1396地点に達する。
シュテム系の回転を続けるので、足腰に疲労が溜まってくる。踏ん張る力がなくなり、転倒回数が増えてくる。全身から力が抜けていくのを感じながら鎌田リーダーを追うが、追い付かない。もう叺谷へ降っているようだ。
何とか追いつきたいと思い、スキーを担いで壺足で直降することを考えた。踏み跡のない樹林帯の雪斜面が如何なるものか、知る余地もなくスキーを外した。
ここでスキーを履くことを考えればよかったのだが、第二歩、第三歩がそれほど沈まず、前進できたので、このまま行くことにした。所が甘くはなかった。第二歩、第三歩ごとに腰まで沈むことの連続だった。何と情けないことか。
体力と時間を消費していく状況に追い込まれた。幸い晴天で気温も下がらず、叺谷の近くまで辿り着き、壺足の悲哀から解放された。どれだけ時間を費やしたのか。新雪の壺足とは如何なるものか。腰が抜けた状況で習得した。
叺谷で休憩 |
ここからの道がよく分からないので、鎌田リーダーへ携帯電話した。到着するまでの間、座ってエネルギーを取り込んだ。
遠くから鎌田リーダー叫び声が聞こえた。こちらからも大声で応じた。
レスキュウに近い状況に追い込まれたが、鎌田リーダーの姿が見えた途端、沈んだ気持ちが払拭され、頑張る気持ちが湧いてきた。
スキーにシールを付け、最後の標高50mの登りに挑戦。気温が下がり雪面がブレーカブルクラストしている。
大きく呼吸をしながら登り切り、ゲレンデに着いた。
ここでシールを外し、ゲートまでの滑降だ。
所が消耗しきった足腰には踏ん張る力が残っておらず、何でもないところで転んでしまう。転ぶと起き上がる力がない。鎌田リーダーに何回引っ張り起こしたもらったことか。
雪面の雪が氷化して、滑りにくい。途中でレスキュウの雪上車が来たので、頼んでゲートまで載せてもらい無事帰還することができた。
今回は、八甲田山スキー行の足慣らしで、初めて履く登山用のスキーを体験することができました。完成度の高いビンディングに感服しました。
鎌田リーダーの技術力、体力を拝見し、そのスーパーマンの様子を直に感じました。
この様な機会を作ってくださったご親切に感謝申し上げます。中村 淳